広島大学教育開発国際協力研究センター石田研究室

広島大学教育開発国際協力研究センター 石田研究室
2019年度基盤研究(B)
「ネパールにおける安全で安心な
学校づくりのための開発モデルの実証的研究」
「ネパールにおける
安全で安心な学校づくりのための
開発モデルの実証的研究」

活動

1)本研究前の活動

現在までに、ネパールでは、学校運営に関して以下のような流れがあり、様々な活動が行われてきました。

学校運営委員会の設立

ネパールでは1990年代に世界銀行の支援により学校運営委員会制度が導入され、住民参加による学校運営の仕組みづくりが行われました。これにより、各学校に委員会は設置されたものの十分に機能せず、学習環境改善などの成果はみられませんでした。

国際協力機構(JICA)による学校運営改善の技術協力

そこで、ネパール政府は、日本に学校運営改善への支援を要請し、2007年から2018年まで学校運営改善プロジェクトが実施されました。

私は、2007年から2015年9月までJICAによる技術協力「ネパール国小学校運営改善プロジェクト(SISMプロジェクト)」及び「ネパール国小学校運営改善プロジェクト・フェーズ2(SISM2プロジェクト)」の総括を務めました(2015年9月まで)。ネパール大地震発生時(2015年4月25日)もカトマンズにいたことから、現地で緊急支援に携わるとともに、復興プロセスやスクールガバナンスの役割、学校と地域住民間のコミュニケーションに関する研究に着手しました。

写真:住民との学校改善計画策定ワークショップ
写真:授業視察風景(右)

挑戦的萌芽研究で地震復興時の学校運営の役割を確認

2016年度挑戦的萌芽研究に採択された「ネパール地震復興から再考するスクールガバナンス強化による教育開発に関する研究」を通して、上記SISMプロジェクトによって強化された学校運営委員会の果たした役割と、地震からの復興進捗の関連性について研究を行いました。同研究では、被災地サンプル校への定期的訪問による観察と聞き取り調査、校長に対する質問票調査、地震から3年後のサンプル校における参加型評価を通してデータ収集・分析を行いました。

教員、生徒、保護者と参加型評価ワークショップ
活動の成果達成度を個人評価(シールでレーティング)

EDU-Portニッポンに採択された活動による防災マッピングの導入

ネパールに対する「子どもの主体性を培う『日本型防災教育モデルBOSAI』を用いた安全で安心な学びの環境づくり支援」が、2016 年度文部科学省日本型教育の海外展開推進事業(EDU-Portニッポン)公認プロジェクトに採択されました。これは、神戸震災後の県立芦屋高校等の「子どもを中心とした防災活動は広まりやすい」という経験を踏まえて、学校における防災・減災を話し合う方法を提案しました。被災校において子どもを中心に学校関係者と地域住民を巻込み学校周辺と通学路の防災マップを作成する「防災マッピング・ワークショップ」を行って、校長や教員、子ども達、地域住民にみられる意識や態度の変化を研究しました。

写真:防災マッピングで学校周辺の防災地図を作成中の子ども達
写真:EDUCA2017のブースで防災マッピングの紹介(バンコク)
防災マッピングを4コママンガで紹介(ネパールのイラストレーター作成)

2)基盤研究(B)の活動概要

本研究では、子ども達を中心に、地方政府、学校、地域住民と協力しながら、各学校の防災・減災の備えを強化するために、以下の活動を行いながら、学校運営と子ども、教員、保護者に現れる意識や態度の変化を確認します。

  1. 環境保全、防災・減災に関する研修ワークショップの実施
  2. 2015年地震発災時以降、復旧・復興時にかけて起きたこと、学校と地域で対応したことなどを記録に残す震災復興ヒストリーづくり
  3. カードゲームのようなツールを使って、皆で学校を中心とした通学路のイラスト地図づくりと危険地域、避難場所を洗い出す防災マッピング・ワークショップ
  4. 参加型評価ワークショップを開催して、地震復興のプロセスと成果、防災・減災による安全で安心な環境づくりの達成状況について、個々人の自己評価、学校運営に対する全体評価の実施

これらの活動を展開するために、これまで以下のスケジュールで、対象ミュニシパリティ政府との調整、対象校を訪問してきました。

  • 2019年5月末:ネパール教育省、JICAネパール事務所との調整、ネパール人メンバーとの打合せ
  • 2019年6月~9月:ネパールにおけるベースライン・データの収集
  • 2019年11月:旧ダディン郡のダディン・ミュニシパリティ行政事務所への説明と打合せ、ダディン地区教育調整ユニットへの説明と打合せ、セカンダリースクール2校視察、対象校の選定
  • 2020年1月:旧ゴルカ郡のスリケット・ミュニシパリティ行政事務所への説明と打合せ、セカンダリースクール2校視察、ゴルカ地区教育調整ユニットへの説明と打合せ、対象校の選定
  • 2020年1月の訪問以降は、新型コロナウィルス感染症の感染拡大により、石田の渡航が不可能になるとともに、ネパールでの感染者増加に伴って、ネパール人メンバーによる学校訪問も不可能となりました。
    石田とネパール人メンバーの間では、メールやオンライン会議を使って現状についての打合せを行っています。
    ネパール人メンバーは、ダディンやスリケットの行政事務所の担当者や対象学校候補の教員と連絡をとりながら、ベースライン調査の質問票調査の配布と収集を行っているところです。